2024年8月 夏期研究大会
今年のAPEJ夏期研究大会は,8月12(月・祝),13日(火)の2日間,工学院大学を会場とし,zoomを併用しオンラインでの参加も可能な大会でした。詳細な記録は,会誌「物理教育通信」No.198に掲載されます。
夏期研究大会の概要(案内PDF)
期日 8月12(月・祝),13日(火)
会場 工学院大学(zoom併用開催)
テーマ 工学の魅力
参加人数 83名(含zoom参加 9名)
プログラム
12 日 |
開場 | 受付 | |||
開会式 | 開会宣言・会長挨拶・実行委員長挨拶・諸連絡 | ||||
研究発表 (原著講演) |
‖ ‖ ‖ ‖ 12:30 |
西村 塁太 | 生徒の探究活動による微小重力実験 | ||
石井 登志夫 | 生徒が主体的に取り組む気体分子運動の学習 | ||||
竹内 透 | マイコンを使った動摩擦力の生徒実験について | ||||
森 雄兒 | 理科教育から見た重力単位系の再考 −kgの意味の混乱調査より− | ||||
昼休み | |||||
業者展示紹介(NaRiKa,フィール・フィジックス)・事務連絡 | |||||
研究発表 (原著講演) |
‖ ‖ ‖ ‖ 15:10 |
広井 禎 | 定年退職者、電磁気の本をながめる | ||
喜多 誠 | 力センサで撃力を測定してみた | ||||
西尾 信一 | 化学エネルギーをどう教えるべきか | ||||
尾崎 龍之介 | ロイロノートを用いたピアインストラクションの実践と所感 | ||||
休憩 | |||||
特別講演 | 工学院大学 教授 桐山 善守 |
工学から探るヒトの運動理解 | |||
初日閉会 | 諸連絡 | ||||
懇親会 (新宿 旅籠 はたご) | |||||
13 日 |
開場 | 受付 | |||
諸連絡 | |||||
研究発表 (原著講演) |
‖ ‖ ‖ ‖ 10:50 |
石井 雄太 | 渦電流型電気動力計の簡易模型から見る動力測定の原理 | ||
今和泉 卓也 | マイコンで教材を作ろう! | ||||
朝倉 彬 | 流体力学に“ちょっと“触れると工学に“ぐっと“近くなる探究活動の実践 | ||||
岸澤 眞一 | 生徒実験「質量をはかる」の報告 | ||||
休憩 | |||||
企画講演 (依頼講演) |
‖ ‖ ‖ ‖ 12:00 |
大野 秀樹 | 東京高専における物理教育 | ||
興治 文子 林 大樹 |
教科横断を視野に入れて物理学の魅力を伝えよう ~電子ピアノを題材としたSTEAMワークショップを例として~ |
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長谷川 大和 | 工学の魅力 ~小学生に無線通信車を作らせてみた〜 | ||||
昼休み | |||||
業者展示紹介(NaRiKa) | |||||
テーマ企画 | ‖ ‖ ‖ ‖ ‖ |
パネルディスカッション 「現代のテクノロジーに埋め込まれている物理を探しませんか」 工学院大学 桐山 善守 東京理科大学 興治 文子 東京工業高等専門学校 大野 秀樹 東京工業大学附属科学技術高等学校 長谷川 大和 |
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グループ討論 | |||||
グループ討論報告・全体討論 | |||||
閉会式 |
会場看板 実行委員長 挨拶 会場の様子
西村さん 生徒の探究活動で取り組んでいる自由落下での微小重力実験の報告。落下装置の開発から加速度センサなどの観察,動画撮影での毛細血管現象の挙動,ISSでの実験提案など実践豊富。
石井さん 熱の単元でGoogle Formsを使った授業の報告。簡易な質問に答える形で全員参加型に授業を展開し,教員だけが計算を進める形からは脱却。次は中身の定着に向けて工夫したいそうだ。
竹内さん マイコンボードESP32と赤外線センサを利用し距離センサを作成。加速度から運動方程式を利用して動摩擦力を測定する生徒実験。生徒のPCを利用しているので環境設定の構築は大変とのこと。
森さん kgは何の単位か。力・質量・重さ・重量でアンケートを取ったが,中学2年で混乱が起きているだろう。kg重とkgをわざわざ混乱させる必要はないという指摘。さらなる調査への協力も募集中。
業者展示
広井さん 現役時代に比べて本の読み方は変わった。電磁気学の本を読み直すと,まだまだ疑問が湧き上がる。役者の多い電磁気分野では誰に焦点を当てて話しても横道に逸れやすい。興味は続く。
喜多さん 弾性/非弾性ボールの衝突時の激力を測定した報告。ボールを2個くっつけたり,振り子式の測定に至るまでに実は工夫がある。イージーセンスだと4.8 ms程度の衝突時間が見られるのも良い。
西尾さん 化学エネルギーは燃料物質が持っているのではない。他のエネルギー同様,系を考えなければならない。化学ではエンタルピーも教えるようになったが,物理ではどこまで踏み込めるのだろう。
尾崎さん 生徒の解答が共有できるロイロノートを使いPI型授業を展開した。教員が用意した選択肢から選ばせる場合と生徒の記述を元にした場合,どちらにも意義はありそう。適切な問題の精査が鍵か。
桐山さん ロボットを研究するうちに生き物から学ぶことも多いと感じ,医学部でヒトの運動原理の解明に携わるように。骨の構造から見る運動の解析,運動の分析から構造の理解,等の話から実物の人工膝関節の回覧も。工学と理学の違い,高校物理と工学との関わり等にも話題は広がった。
石井さん 電磁ブレーキをかけた際に磁石は反作用を受けるのか?という質問を受け,実際に簡易模型を制作し,その力を測定した話。些細な疑問に思えても,実際に答えようとすると工夫が必要になる。
今和泉さん IOTM(Internet of Teaching Materials)のススメということで,マイコンを簡単に使ってみませんか,と実演付きで紹介した。ちなみにIOTMは今和泉さんの造語。
朝倉さん 課題研究の一環として流体力学の分野を扱った。高校物理では登場しない分野であり,まだ物理基礎を習う前の学年なので,体験的に学べるように設定。身近な現象だと興味は沸きやすそう。
岸澤さん 小河原さんの実践をやってみた話。思いの外,多くの測定方法にチャレンジしてくれた。試行錯誤することから学べることは多い。探究型であり,かつ力学分野の総まとめとしても良さそう。
大野さん 工学の基礎としての,自然科学としての物理を伝えるため,東京高専では1年次から専門科目を意識させて実験・実習を行っている。校外研修や工場見学なども合わせながら,先端技術に触れる取り組みも。これからの時代を担う学生に何を伝えどう育てるかは,どこも重要な課題だ。
興治さん・林さん STEAM教育の実践として高校生を相手に簡易的な電子ピアノを作る講座を行った。ワークショップを通じて音に関する分野の知見を広げ,回路の仕組みを理解することが目的。高校生がコンセプトマップを作成することによる評価も行った。自ら「学ぼう」という気にさせるのが大事。
長谷川さん STEAM親子実験教室と銘打って,小学生に無線通信車を作らせてみた。保護者も一緒に体験することで,総合学習に対する理解を深めてもらうねらいもある。micro:bitを利用し,PC内で閉じてしまわない教材とした。理学と工学やモノづくりは地続きである。相互に高めあっていきたい。
パネルディスカッション