2021年8月 夏期研究大会
今年のAPEJ夏期研究大会は,8月12日(木),オンライン(zoom)で開催しました。大会の詳細な記録は,会誌「物理教育通信」No.186に掲載されます。
夏期研究大会の概要(案内PDF)
期日 8月12(木) 9:00〜18:00
会場 オンライン(zoom)
テーマ 仕事・熱・エネルギー
参加人数 71名
プログラム
開会式 | 開会宣言・挨拶・諸連絡 | ||
研究発表 (原著講演) |
増子 寛 | 微小電圧・電流の測定 | |
勝田 仁之 | R言語プログラムを書くと自動で多肢選択肢テストが解析できるので R | ||
清水 裕介 | 電気分野における位置エネルギーや電位の扱い方 | ||
石井 登志夫 | 生徒の端末を利用した正弦波の導入 | ||
西尾 信一 | 内力のする仕事 | ||
休憩 | |||
小野 浩志 | まち針ですべての像の位置や焦点距離を求める | ||
西村 塁太 | 力学授業での探究活動 | ||
笠 潤平 | 英国Aレベルの物理実験の現状 | ||
今和泉 卓也 | CM系とスチュワートの定理 | ||
ちょい枠 ポスター発表 | |||
昼休み | |||
企画講演 (依頼講演) |
琉球大学 准教授 前野 昌弘 |
高校物理と大学物理の熱力学 〜何が難しい?〜 | |
東京都市大学 教授 右近 修治 |
「エネルギー保存則」どう教えるか | ||
京都AP研究会 岩間 徹 |
物理基礎「熱」分野の授業について | ||
休憩 | |||
討論 | グループ討論 | ||
グループ討論報告・総合討論 | |||
閉会式 | 開会宣言・挨拶 |
開会式 実行委員長 挨拶 APEJ 会長 挨拶
増子さん オペアンプを用いた増幅器をリニューアルし、磁場中を運動する導体棒に生じる起電力等,微小電圧・微小電流の測定を可能にした。環境磁場の測定などさらに応用が広がりそうである。
勝田さん R言語(オープンソース統計解析用プログラム言語)を使ってFCI調査結果の解析を自動化した報告。ソースコードも共有してくれた。みんなで協力して授業準備に時間を使えるようになりたい。
清水さん 電位を運動エネルギーでイメージしたり電荷分布を示すと生徒がイメージしやすくなるのではないか、という提案と、抵抗の両端における電荷分布についての質問。活発な議論で盛り上がった。
石井さん 今和泉さんの実践を見てずっと授業でやりたかったというDesmos実践報告。生徒個人個人がWeb上で扱って波の式を理解する。各点の動きを細かく追って、位相に注目させるようにした。
西尾さん 内力を及ぼし合う質点系のエネルギーを変化させるのは、外力による仕事であり内力のする仕事は関与しない。系を明確にし、仕事をエネルギーのフローとして捉えるように指導すべきと主張。
小野さん レンズを通る光線の経路を、まち針を用いて追跡する実験を紹介。四角いガラスブロックではよく行われる手法だが、レンズで行う発想はなかった。凹レンズの光線を追えるのは便利かも。
西村さん 高2の物理基礎で“運動方程式を使った様々な運動の解析”と題し、7時間分の探究活動を行った。アトウッドの装置や落下スリンキーの解析など意欲的な活動があった。反転授業も併走して行う。
笠さん 昨年に講演会もあったが、実験活動の機会が設けられているか、生徒に実験スキルが身についているか、を評価する英国のシステムの報告。週1回以上実験を行っているケースは4割以上らしい。
今和泉さん 二次元衝突の実験を質量中心系(Center of mass)で幾何学的に見て、スカラー量に着目すると、質量×速さ2の不変量が見つかる。ここからエネルギーにつなげていこうという展開。
ちょい枠ポスター発表
今年の夏期大会では、ちょいと気軽に発表できるポスターセッション枠「ちょいワク」を開催。
大会前からポスターを掲示し事前質問も受け付けた。発表は以下の10件。
♣「微積分と物理」の実践と仕事・エネルギー:今井章人
♣½LI² (コイルが蓄える磁場のエネルギー)の導出について:井上賢
♣モーメント実験器の改良:石井登志夫
♣エネルギー棒グラフ(Energy Bar Chart)を強調した仕事と力学的エネルギーの授業展開:大谷徳樹
♣「自転車をこぐ」の力学~まさつ力・熱・仕事の関係:夏目雄平
♣SPARKvueによる単振動の加速度の測定 実践報告:吉岡裕幸
♣お会計はこちらです(水と慣性力):松田淳二
♣ビースピ的な、単体で(速さではなく)加速度を測定できる道具を作ってみた:今和泉卓也
♣ポスター発表;ポスター製作課題:市原光太郎
♣学習者オリエンテッドカリキュラム試行報告:伊東佳奈美
前野さん 「よくわかる○○」シリーズで有名な前野さん。(大学でも)熱力学は難しいと言われるが、ストックとフローの違いやエネルギーそのもの等、力学での躓きがあるのだろう。また,力学と熱力学など分野のつながりがないまま“各個撃破”で学習してきている習慣も問題であろうと提議された。
右近さん これまでも系を考えることの重要性を説いてきた右近さん。どのように系を選んでも,エネルギーの流入出を含めたエネルギー保存の式は成立しなくてはならない。ここを出発点として考えると生徒の理解が進んでいくのではないか。高校物理では一質点モデルが前提にあることにも注意が必要。
岩間さん 京都アドバンシング物理研究会を代表して、公開講座や授業研究の中から得た知見をまとめていただいた。熱平衡から比熱を求めることができても、熱の概念が形成できていないのではないか。実際に演示実験をしたり探究的な活動を通じて学ばせ、形成的評価等を行っていきたい。
zoomのブレイクアウトルーム機能を使ってA〜Iの9グループに別れ、グループ討論をした後に全体討論をおこなった。論点や課題点が幾つか見つかり、系を選ぶ意義から教科書をどのように変えていくか、授業の展開の悩みやアイディアを共有できた。生徒の概念理解につなげたい。
閉会式 実行委員長 挨拶 APEJ 副会長 挨拶